(上記写真:私がデザイン,技術に直接関わり,企画設計施工した弊社作品を少しランダムに掲載。クリックすると拡大します。一部は世界最大の国際建築家連合(UIA)の関連で昨年,バルセロナの北海道建築展に要請を受けて作品出展しました。)
平成も23年目ですね。
私が東京から戻ったのが平成3年2月ですから間もなく20年になろうとしています。
振り返ると,懇願され任された時は,私はいつもどん底からのスタートなのだなと感慨します。
昨年他界した会長(元社長)が平成2年に交通事故を起こし,会社の危機を救う為に会社に入社した時がまず最初です。売上半減でした。今から思えば,その当時の元社長は希望を失っている状態でした。
バブル崩壊,メイン行の拓銀破綻,準メインの共同信用組合破綻と,延々と不景気の連続のようなものです。よくやって来れたと思います。それでもそのどん底から15年で4倍以上の売上規模で社員も2倍程増えました。父の交通事故がなければ,売上規模は2倍とちょっとでしょうか。2001年からISO9001を独自取得して社長に就任して10年が経ちました。社歴からすると,3周回遅れのランナーで,そこから再生をはかる気持ちで,教科書にない直面する諸課題を見つめながら,立て直してきたように思えます。
その諸課題の中,私が「会社を墓場までもっていく気ですか。」と半分冗談,半分真剣によくいっていたくらい生前,会長は銀行印を社長である私に渡さないで支払や資金繰等の財務を執り仕切っていました。執り仕切る存在感が欲しかったのでしょう。いまでいうCFO(最高財務責任者)かより適切にはCAO(最高総務責任者)ですか。
残念ながら社長の私は,今まで振り返れば会社幹部とほとんど差がない給与でした。よくやってきた思います。顧客の為にも会社を存続させなければならない1点がそうさせてきて,今日不況業種と言われているこの建設業,特に栄枯盛衰が大きい建築企業として,ここに生き残れたのだと思います。
実質,死ぬまで現役だった会長でしたが,リーマンブラザーズショック以降,かなり自信をなくしてしまいました。それは公共工事のほとんどあたらないという数十年あり得ない,しかも民間もご存知のごとくの取組み成果が出せない世界です。これまた弊社として2度目どん底2009年後半,1年半前に,社長就任9年目にして遂に銀行印を会長から手渡していただきました。
経営とはある意味で「人モノ金情報」の経営資源の最適化ですが,2009年後半にここでようやっと念願の経営権の全権掌握が殆どがそろい,さあ待ちに待った戦略を構築したいところでしたが,生活防衛的な守りの企業努力しか出来ない後退局面が昨年2010年となってしまいました。
その中で,亡くなる最後まで病床で「不況は公共工事が頼みの綱だ。結構な本数が昨年よりあるが,公共工事はとれたのか。」が毎度,会長からの私への問いかけでした。消えた受注に全く期待に応える事なく無言でいるしかなく,無念な思いをしたものです。その中で父である会長は他界していきました。
2010年度は北海道庁も札幌市も例年より多い数でしたから,公共工事を担う弊社の技術者に相応しい従来通りの受注工事量だけを確保するつもり参加で取組んできましたが取れない為,結局,延々と入札し続け,入札本数は20数本で総額で50億円以上もの入札の参加で,どれも全く受注できないで積算者4,5名が延々と1年間ただ働きにになる結果にしかなりませんでした。
驚く事に,入札業者の落札額は5億以上を除き,ほとんどまともに利潤のでる予定価格の90%で落札できるにもかかわらずです。従来,入札に関して真面目に落札できた業者が,このような状態に陥るのですから,公共工事の入札結果のあり方は尋常ではなく,最低入札適切価格でとれず,現在は公共工事は宝探し入札と化しています。
そして,会長はなくなる直前に「業界の長い経験の嗅覚として,今の時代にそのようなあり方をしていては今よくとも,税を支払っている地域の人に説明のつかない危険な業者がやがてでるかもしれない。」と言い残していきました。その場合は確かに真面目に取組んでいる業者がセーフティネットもなく,普通なら希望を失う状況にこの入札は,行政が入札で意図しないとしても,結果的になってしまうと思います。
おそらく建築は専門工事見積りを独自に割り出さず,業者参考見積りをある特定の専門工事業者からとらず,バラバラにとって同じ公共工事を事前に各行政マンが予定価格積算するなら,予定価格が一致しない可能性が大きい感触があります。
では予定価格事前公表なく90%弱の落札ボーダーラインの億単位の工事入札を,概ねほぼ千円単位から概ね30万円程度の誤差で落札できるのでしょうか。一部を除き長年積算している弊社でも神業に近い状況です。積算に長けた業者でも毎回入札でぶれますが,何故か落札業者の入札額だけは神業に近いホーダーラインに近似します。これはそもそも億単位の工事でも入札前未公開の予定価格額をほぼ100%近く極めて正確に出せなければ,ほぼ無理な入札の仕組みです。
予定価格90%の落札では施工がまともにできる業者であればコスト努力がなくとも大抵,どの業者でも利益がでます。業者にとり,有難い仕組みですが,それであれば長年コスト努力をしてきた弊社の様なほぼ建築専門の業者が,すこしでも税の費用対比効果を高める意味で,落札できないのは,かなり腑に落ちない出来事です。全くとれないのですから。
何かあるように思えます。それは弊社ばかりでなく,やはり業界に関与する複数の人が気付いており,それだけに業界を心配してます。予定価格ブラックボックス化する不透明な入札方式は変更はする必然性が喫緊にあると見ています。
特にここで皆さんに強調したい事は,建築工事のみで10億円以上のビルやマンション等を住宅以外を主力としている社歴40年以上の建築会社で,公共工事を全くしていない地場建築企業は皆無に等しいという実態です。
過去50年スパンで見ると,多くの総合建築業者がいなくなりました。いまは土木専業の企業に同情を禁じ得ませんが,昔から一般に「建築」業者は社歴10年20年で見ると,非常に潰れやすい業種です。企業維持は30年以上ともなると,よく考えてみると容易ではありません。民間のみだけで10億以上の地場企業が40年以上生き残っていることは皆無に近いのです。やはり30年以上長年存続するのが難しいと言われている民間のみの住宅産業とくらべても,それより如何に難しいかをここで実際,再認識しておきたいと思います。
長年継続するのは難しい業種と言えましょう。父でもある他界した会長が,遺言書の最後に書いた文章がありました。
今までもそうだが,長年経営してきた実感として「建築」業とは非常に難しいものがあると思っている。それだけに今後,益々混迷する経済の中で事業継承してもらう事には,なんともいえない心残りがある。しかし,社会の為にも,ぜひ頑張っていただきたい。というような主旨が遺言書に書かれていました。なんとも,胸にこみ上げるものがありました。
特色のある,基本的に人間がいる限り無くならない分野で,その道にひたむきに真摯に真面目な,コスト調整力もある地場企業をなくし,多様性がなくなると,民間の地域技術や文化すらもなくしていきます。後継者難のところはM&Aかもしれませんが,そのように努力している建築売上10億円以上の地場同業他社は私が考える限り,少なくとも10社はいます。
特に建築は約30工種の専門工事業者と共に一つの工事を総合化するので地域産業的にも裾野の広い業種です。産業に多様性があり,地域経済の多様生に富んだ波及性が特徴です。多様性は変化に強い産業インフラになり得ます。そのような多様性のある派及した企業が建築周辺やそれ以外のチャレンジを行えれば更に変化に強い地域産業が芽生えます。
こうして,地場建築産業を振興する事は衣食住の「住」という基本的に人間がいる限り,
無くなりはしない基幹産業でありますから,そのような目線をもっていただければ,甘んじる事なく,
時代に応じて改善工夫しながら邁進する建築企業には,存続への道をどうか与えてもらいたいというのが切なる思いです。
出来得れば,建築業界構造改革で,長期にわたり棲み分け共存存続できるビジネスモデルがブレークスルーするような局面がでますと,新たな業界の展望が得られるのかもしれません。
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さて,
2010年の感想が長くなり,そのように非常に課題を残した2010年でしたが,
新年を開け,心機一転の,2011年になりました。
年末年始は天候にやや恵まれた。いい気分で新年を迎えられました。
私自身は,昨年の諸々の垢落としが出来たように感じられる,非常に有為な休日期間を過ごせたのかなと思います。
これからは,皆さんとって,エコポイント,確認申請の半ば正常化,建設資材コストの従来単価への落ち着き等の環境から,昨年の途中からは,民間のお客様がご検討なさるには,今年は久々にいい環境が整いつつあると,つくづく思います。
今日,1月6日に北海道新聞が朝刊で,なかなかいい経済評論の論客をのせてくれました。
1ページを使い,国の財政論を語ったものが載っていました。エコノミストが評価する経済評論家の先生で,もし専門家で私に反論があるなら宜しくどうぞ。という自信のある方です。いま国家財政に関する認識は新聞マスコミも専門家の多くの著作を見ても百花繚乱状態ですが,どうもここに,ある一つの正確な羅針盤があるのではと思います。
詳しくは紙面をお読みになるといいですが,日本は努力さえすればまだまだ悲観しなくてもよいと言う論調です。希望はあるという意味で。そういう事であれば,悲観的に考え大胆に行動するというのを,いよいよ始めるにはよろしい状況にあり、とでも申せましょうか。
・・・・・長くなってしまいました。
皆様には,今年が希望するに値する,よい年である事を,心より祈念を申し上げます。
御一読,ありがとうございました。