記念館的建築を依頼され、私がデザインし、当社がてがけた邸宅】
さて,総選挙も終わり,9月です。
秋は物事を深く考えるには相応しい季節。
90年以上前,この地で創業した山本仁四右衛門の想いが偲ばれます。
私はその孫にあたるのですが,私が生まれる5年前に他界しました。
つまり,祖父を私は一度も見ることができませんでした。
子供として5番目だった父は,戦前6歳で母に他界され,
高度成長期前に父に24歳で他界されてます。
それゆえ,経営のバトンを渡された父も苦労の連続でした。
私も幼少期からその仕事の姿をそばで見続けてきました。
それだけに,私は祖父への関心,想いが
人一倍,強いのかもしれません。
今では私にとって伝説化したその創業者の事を
事業に照らし合わせながら,創業者の足跡(ソクセキ)を辿りながら
この会社の理念を,遺伝子を深く思い巡らすことが度々あります。
改めて振り返ると、創業者は激動の社会を生き抜いてきました。
開拓期,世界恐慌,戦争,戦後復興・・・。
どのような心意気で,面持ちで,そして想いでそれらの激動期を
過ごしたかを,とうとう創業者である祖父と同じ立場である私は
直接聞くことはできなかったのです。
そこから、冒頭に話した祖父への関心,想いがやはり,
いろいろな角度で、深く思惟を促すのです。
このような90年以上の創業の歴史のある企業を見つめていくと,
リーマンブラザースに端を発し,象徴されるような
「金融至上主義資本経済」を多少の知識をもつならば,
皮膚感覚で読み取る事が出来ます。
企業の利潤は「手段」に過ぎず「目的」ではないという事です。
確かに企業は利潤無しでは生きてはいけないものです。
しかし,理念の追求こそが企業の源泉であり,
サスティナブルな源泉である事を
本当は逢えてもよかった,祖父の創業者への憧憬を込めて,
心の中で祖父と対話しながら
私は,そのように想いを深めていってます。
創業者の理念や想いは,抽象画と同じく詩的多様性の可能性のある
企業にとっては初源的な「言の葉」だと捉えるなら,
その理念や想いは時流に即し,
創造的な解釈のもと開花させていくべきものと
深まり行くであろうこの秋に,改めて思惟したりしたくなります。